2012年11月2日金曜日

SSメモ:幼女戦記Tuez-les tous, Dieu reconnaitra les siens

幼女戦記Tuez-les tous, Dieu reconnaitra les siens(カルロ・ゼン)

うわっ、うっわー……なんだこれは……。

もう感嘆の息しか出ませんよ、これ。よくもまぁ世界大戦を2つ混ぜてこねて、きちんと形として仕上げているものだ。コーラとペプシを混ぜたらよくわからないすごい炭酸飲料ができたよ! と無邪気に喜んでるみたいで、なんかもうこの時点ですごく狂気じみてる。いや、一度は妄想したことありますよ? 大戦2つ混ぜればすごい戦争になるんじゃないかって。2度に渡る大戦において、それぞれ特筆して大きく技術が発展しており、苛烈極まる塹壕戦がいかに凄惨か、そしてそこでどんなドラマが生まれるだろうか、さらにそこに焦土作戦やら核やらが登場してくるとどうなるのか、戦記が好きな人なら多少なりともそこにロマンを感じるはず。

しかし、しかしだ。
そこには多大な困難が待ち受けていることは言うまでもない。
そもそも一般的な人は戦争なぞ知らないし、海外でやってるどんぱちなんぞテレビで知る生ぬるく過激な現状をのほほんと眺めているし、地元のとち狂ったヤクザの総本山でもない限り、こんなにも戦争末期の雰囲気万歳!みたいな頭のネジが飛び散った感想などは抱かないものである。またかなり専門系の人、いわゆる軍オタ、ミリオタになってしまうと、これもやや個人の頭の中で全てが完結しやすく、そうした人間に限ってなかなか自分独自のものを生み出し難いものである。

だがそれを容易くやってのけ、ドイツのルーデルを彷彿させるような主人公を投入し、戦時の英雄と讃えられるなど、まさしくフィクション戦記の王道であり、狂気じみた思想や特別なカリスマ性、歴史造形の詳しい解説は、この物語が提供する一つの完成されたテイストに違いない。そして何とも恐るべきことにこの物語には人を魅了してやまない幼女人の儚さを冷酷なまでに余すところ無く描いている。軍人のジレンマ、理論と現実、狂気と理性、宗教と道徳、それらの題材すらもミックスさせ、戦場における倫理の問題などを逃げることなく扱い、全てを大戦にぶちこんでいる。これを狂気の沙汰と呼ばずになんと言おう。

読み進めている内に、体の内側から見えない何かに食い破られているというか、これまで知ってて、でも見向きもしなかったものに真正面から対峙してしまった時の戸惑いというか。サンデル教授の講義みたいに、いろいろ曖昧に濁して逃げていたものを改めて考えさせられるんですよ。それもこれも主人公の幼女が悪い!! つーかどういうことだよ、作者さん……。潤いで投入してるんだろ……戦時なんだろ……。普段気難しい軍人が魅せるちょっとした恥じらいとか、ぐへへな展開とかもちょっとくらい期待していいじゃないか……。(外道

まぁそれはさておき。

改めて戦時のどうしようもない空気というものを感じた気がします。
どうにもこういう破滅的な話とかはやや苦手なところがあるんですが、ついつい見てしまうんですよね。戦記もので連戦連勝してるやつも好きと言えば好きなんですけど、このSSみたいな硝煙と血が入り混じったリアルな匂いのするやつも定期的に見たくなるときがあるんです。別に破滅願望とかないはずなんですけどねぇ。なんかあれだ、恋すらしていないのに失恋の歌を聞いて心が苦しくなるようなあんな感覚ですよ。うん、ほぼそんな経験ないけどね(

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